哲学のテの字も知らんけどな
たとえツッコミって、すごいおもしろいよね。
芸人で言えばダウンタウン松本を筆頭に、フットボールアワー後藤、ブラックマヨネーズ小杉など、優れたたとえツッコミストは優れたエンターテイナーである。
秀逸なたとえツッコミ芸人といえばまずこの人達の名前があがる。
youtubeにフット後藤のツッコミまとめみたいな動画あるし、あとアメトーークでやってた小杉いじりたい芸人とか見れば彼らのおもしろさがよくわかるぞ!
そんなたとえツッコミが大好きな私ですが、ふと思ったのだ。
なぜたとえツッコミがこんなにおもしろいのかと。
そこで考えてみたいのが「クオリア」についてである。
「クオリア」という言葉がある。
クオリアとは、物質や概念に内在する質感のこと。
つまりはなんというか、モノから発せられるイメージ。
正確には私は「モノを認識してから脳内で随伴的に生じる内的な表象」と捉えている。
あ、なんかいま賢そうなこと言ったよ俺!
で、ここでいうクオリアは、以下のような性質をもつものとしてみる。
・言語化できない(概念ではない)
・モノには同時に複数のクオリアが内在する
・ある個人にとっては絶対的(同じモノに対するクオリアは人によっては異なる)
つまりまあ、頭の中では「なんか〜〜な感じ」というくらいの捉え方なものとする。
「〜とする」とあるように、これは以降の議論で用いる言葉の仮定を勝手にしているのであって、哲学における「クオリア」の概念を正確に解説しているのではない。
さて、たとえツッコミは「クオリアを介した二事象のアソシエーション」ということなのだと思うのである。
例えば、私が事象Aに対してaというクオリアを、事象Bに対してbというクオリアを感じるとする。
つまり、Aは「なんかaな感じ」なモノ、Bは「なんかbな感じ」なモノである。
(ただしここで実際にはクオリアは言語化できないから「aな感じ」とは認識されない)
あと、クオリアはあるモノに対して複数あるとしているので、aはAに内在するクオリアのうちの一つの要素であるということ。
つまりAにはaのほかにxというクオリアもyというクオリアももつかもしれない。
(リンゴは「赤い」かつ「丸い」「おいしい」みたいな。ちょっと違うけど)
で、このとき、aとbの共通部分が多い(互いに近しい)ときにたとえツッコミが成立するのである。
便宜上、ここでは極端に、a=bとしてみる。
すなわち、AとBは全く同一のクオリアを持つと仮定する。
すると、AとBがa(=b)というクオリアを介してリンクする、associationするのだ。
先ほど述べたようにクオリアは言語化できないが、
・AはまるでB
・BはまるでA
と認識できるようになる。
これが、たとえツッコミである。
ここでAに対して「Bか!」って言うのがたとえツッコミ!
たとえツッコミがおもしろいのは、クオリアが言語化できないという性質に起因する。
つまり、同じ(近しい)クオリアを持つ事象を用いて、ある事象を表現することで、ふだん言語化できない感覚(クオリア)が表現できる。
ふだん表現できないことが表現できて、気持ちいい!
一種の爽快感のようなものである。
ここで事象AとBは認識的に距離の遠い概念であるほうがより爽快である。
より遠くにあるものがリンクすることで「意外性」が生まれるのだ。
私はこの「爽快感」「意外性」が「おもしろさ」につながるのだと考えている。
これが、たとえツッコミのおもしろさである。
例えば、youtubeにあるんですが、ガキ使でダウンタウン松本が、相方浜田がすごい嫌なニオイに対して発した「ウエェ」という声に対して言った「ホンマに嫌になった時のウルトラマンか!」というたとえツッコミがあった。
この例で言うと
・浜田の嘔吐しそうな声
・ウルトラマン
という、一見何も関わりがなさそうな(距離の遠い)二つの事象が、リンクしているのである。
ここで「何を介してリンクしているのか」と問われると、うまく言語化できないはずだ。
それがクオリアである。
クオリアは、モノを知覚してから頭の中で認識すると同時に随伴的に生じるイメージであって、うまく表現できない。
これがたとえツッコミのカラクリである。
以上の議論から、いざ自分が上手いたとえツッコミを求められたときに、どういったことに留意すれば秀逸なたとえツッコミをすることができるかを考えることができると思う。
まずは「事象の要素分解をすること」である。
ある事象にはこんなイメージもあるし、あんなイメージもある。
そこで抽出したイメージをストックしておくと、似たようなイメージを持つ別の事象に対してたとえツッコミをすることができる。
それから「語彙力」である。
つまり先ほどの、要素分解をする事象を、事象そのものを多くストックすることである。
加えて、語彙がおもしろいだけでなんかおもしろい。
ここまで書いてみて思うのは、クオリアってのはたぶんこういうことじゃないよね。
なんとなく「イメージ」っていう言葉に置換したほうがわかりやすいし、たぶんそのほうが合ってるよね。