映画の「昔のほうがよかった」に関する社会学的考察

アニメとか映画とか「昔のほうがよかった」ってよく言われますよね。
個人的にクレヨンしんちゃんで強くそう思ってるけど、たぶん他の作品にも言えることだと思う。
これは懐古による幻想の上乗せなんじゃないかってのはもちろんある。が、それを否定することは実質的に不可能。考えられる限り、懐古を否定する方法がないからね。
だから今回は「確かに昔のほうが質のいい作品が多かった」と仮定して話を進めていきます。

ではなぜ、今の作品は昔に比べてよろしくないのか?
考えられる理由の一つは、視聴者の目が肥えたからである。
ネット社会になって情報の拡散スピードが著しく速くなり、人々はたくさんの作品を網羅的に鑑賞できるようになった。
その結果、視聴者の批評する目が肥えたのである(批評するだけでクリエイティブじゃない人やけど)。
アニメ一話で切った〜〜とかまさにその典型ですよね。

作品の質の低下は、視聴者が作品の悪いところを指摘できるようになっただけとか、粗を見破ることができるようになっただけとかそういう話ではない。
そんな視聴者の変化に対応した作品製作側の変化である。

視聴者は批評が上手になっただけでなく、広告を見て面白そうな作品を見抜くことも上手になった。
つまり、たくさんの広告を目にすることで、視聴者は本当に面白そうなものに足を運ぶ判断能力も身につけたのである。

そうなると当然、マーケティング手法に重みが置かれるようになってくる。
配給側はより多くの客に映画館に足を運ばせることが大事だから、より多くの人が喜ぶ作品を作るようになる。

こう考えると、配給側にとって最もよい作品とは「多くの目の肥えた視聴者が観ようと思う作品」である。

その結果、無難に映画ファンが喜ぶツボをおさえつつ、少しでも批判されかねない演出をできるだけ排除した作品が多く蔓延ることになる。

これからもっと情報化は進んでいって商売は電子的な情報の売買ばっかりになるだろうから、この傾向は食い止められるものではないんでしょうね。
だからこそ、儲けを求めないアマチュア団体の作品とか、映画ほど大衆性のない演劇とかが、より面白くなってくるかもですね。